Vintage Jacquard Stripe
- fuhaatelierofficia
- 5月31日
- 読了時間: 3分
更新日:8月1日

織物の産地、尾州産地で製織された「Vintage Jacquard Stripe」は、経年変化で様々な表情の変化を魅せる壁からインスピレーションを受けてデザインされた。
自然な膨らみや凹凸感を表現するために、手織りのような風合いに仕上げることができる低速のシャトル織機、平岩製ションヘル織機で製織された。
ジャカードは、織物の紋様の情報を記録している「紋紙」と呼ばれるカードを使い複雑な柄や立体的な柄を織りなす技術のこと。紙に開いている一列の穴が緯糸一本に対応できるジャカード織機がこれらの情報を読み取り、織物の経糸の上げ下げを指示して紋様を織り出している。
現在はコンピュータを取り入れることで、より多種多様な柄を表現でき生産効率が向上した。紋紙は産地によって規格が少しづつ違い、今回は尾州産地の織機に合った規格の紋紙を使用している。




デザインした紋様はまず、京都府上京区西陣地区にある歴史のある職人達のもとでデータに変換される。その後京都府与謝野郡の紋紙屋で紋紙を作成した。
現在はデジタルジャカードが主流なため、紋紙を作成する機械は日本にもあまり残っていない。故障した場合の交換するパーツが無いことや直せる職人が減ってきている現状があるため、今やとても貴重な機械となっている。
そのため、穴がしっかり開いていないエラーが起こることも少なくないそうだ。穴が確実に開いていないと、柄を正確に織ることができないため、穴が開いているか光を当て、透過させることで検品する。光がランダムに開けられた紋紙の穴を通り、地面に落ちる様子はとても美しい。






紋紙はその後ようやく、毛織物の産地、尾州産地へと送られる。ションヘル織機を5台取り扱う小規模な歴史ある機屋で製織された。糸の特質、やデザインを活かすためにも低速で製織できるションヘル織機を使用した。
ションヘル織機は通常の量産品で使われている織機と比べると生産効率が低く、1/5程度のスピードでゆっくりと丁寧に織り上げることが最大の特徴。エアジェットタイプなど高速織機で織ると、一日に3反(約150m)織ることが出来るのに対し、ションヘル織機は1反(約50m)織るのに3日ほど要する。しかし”ゆっくり織る"という事に拘りたい良さがあるのだ。それは縦糸に余計なテンションをかけることなく織ることができるため、ふっくらした、まるで手織の生地のような風合いに仕上げることができることだ。
全てで420枚ある紋紙を織機が読み取りながら動く姿や、他の織機と比べると木製の部分が多く、重厚感のある音をたてながら動く様子は、機械というより生き物のように見え、愛おしささえ感じる。


その後、京都のアトリエで縫製、染色、洗い加工まで一貫して制作した。
生機で縫製し洗いで手で丁寧に洗い込むことで、さらにふっくらした風合いに仕上げることができた。
このシーズンでは、製品洗いのみの品番と、直接染料で染色した品番を展開した。

日本の繊維産業は衰退を辿る一方だと言われている。産地に足を運んでもいい話を聞くことは少ないことが現実。
生地は2022年の冬に作成したが、2023年の夏頃には、この生地を作成してくれた機屋の職人は病に倒れ、現在は休業しており同じ生地を作ることはできない。
後継者不足が深刻化している産地は様々な問題を抱えている。生地の魅力や産地のことを発信し、少しでも現状に触れ、知ってもらうことが大切だと思っている。
それらが実現できるような、ものづくりのプロセスを大切にしたブランドでありたいと思う。







