sabi kasuri handwoven denim
- fuhaatelierofficia
- 6月7日
- 読了時間: 3分
更新日:8月1日

2023年に制作した手織生地。
糸染めから手作業で作り込み、手織りで仕上げたこのデニムは、2023collectionのテーマであるsabiを体現する、経年変化をデザインしたテキスタイル。
Fugo Uemuraでは数シーズンに一度、手織りのテキスタイルを使ったアイテムを発表している。
その中でも経年変化をより魅力的に表現しようと試みたテキスタイルがsabi kasuri handwoven denimである。


「芯白」デニムが好きな人なら聞き慣れた言葉。
言葉の通り、経糸の一本一本が中までインディゴに染色されず、酸化して発色した状態のまま製織されるため、使っていくことで摩擦により表面のインディゴ層が剥離し、白く色落ちしていくのは通常のデニムの特徴。
そこからさらに発展させた生地がsabi kasuri handwoven denimである。
糸を先にカラフルに染色し、特殊な加工を施した後、上からインディゴをオーバーダイする。重ねて染色することで普通のデニムとは違う経年変化を見せる。
染色は全て手で行うため、何度も試作を重ねながら理想的な色落ちをする染色方法を模索した。



製織は織設計から始まり、経糸の整経へと進んでいく。
経糸にはラミー(苧麻)の太番手強撚糸を使用し、染色方法との相性が良い強撚糸を選択した。
糸を染め分けるために、紐で強く括り、括った部分には染料が入らないようにする。そうすることで、経糸を絣状に様々な色へと染め分けることができる。

経糸を染め分けた後に、特殊な加工を施し、インディゴでさらにオーバーダイしていく。十数回染め重ねることで地色と重なった深い藍色を表現できる。カラフルな色の上からインディゴが複雑に重なり合い、玉虫のような表情に仕上がる。
織り機に経糸をかけ、緯糸を打ち込んでいく。緯糸には大正紡績のオーガニックコットン19/2の糸を使用した。表情が均一で綺麗な雰囲気に仕上げたかったため、双糸を選んだ。生地の組織は2/1の綾織りを採用しており、緯糸が多く露出する裏面も経年変化を感じられるように松煙を使った墨染を施した。

裁断、縫製では手織りの風合いを活かすような縫製を心掛けた。地縫いにはミシンを使用するが、伏せ縫いは手縫いでまつり、肌当たりが良いように仕立てる。


裁断、縫製では手織りの風合いを活かすような縫製を心掛けた。地縫いにはミシンを使用するが、伏せ縫いは手縫いでまつり、肌当たりが良いように仕立てる。

パターンには和服のような直線的なパターンと、大量生産を目的としたアメリカのヴィンテージワークジャケットの作りに共通項を見出した、簡素で平面的な仕立て。前立ては生地の経糸を用いて手縫いで縫製し、木製ボタンをインディゴで染めたオリジナルボタンを使用するなど細部のディテールまで作り込んだ。
簡素でありながら、身幅と着丈のバランス、後ろ裾のカーブなど、生地の自重で体にフィットするパターンになっている。

この服は”着る”ことでさらに美しく変化する。制作から一年半ほど着用し、洗濯は優しく水洗いを2回ほど。表面のインディゴが摩擦により剥離し、地色が少しづつ見えてきている。普通のデニムでは体感できない経年変化を見せるsabi kasuri handwoven denim。日々着用することで想像を超える経年変化が見えてきている。永く愛せる服作りをする時にいつも戻ってきて見つめ直す、私にとって大切な一着となった。10年後、20年後も永く着たいと思う。




















